2025.09.30

アパート経営に必要な初期費用はいくら?維持費用やリスクを解説

アパート経営を始める際は、さまざまな費用がかかり、初期費用の10%~30%程度の自己資金が必要とされます。今回は、初期費用の内訳、維持費用やリスク、アパートローンについて解説します。
監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石 泉
株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
https://www.izumi-ohishi.co.jp/profile.html

アパート経営にかかる初期費用

アパート経営に必要な初期費用の内訳は以下の通りです。
・建築費用または取得費用
・不動産取得税
・登記費用
・印紙税
・各種保険料
・ローンの事務手数料・保証料
それぞれ詳しく見ていきましょう。
アパート経営にかかる初期費用の計算

建築費用または取得費用

建築費用や取得費用は、アパート経営の初期費用のなかで大きな割合を占める要素です。これらの費用は、建築または取得するアパートの構造や大きさによって大きく異なるため注意しましょう。
アパートのおおまかな建築費は、坪単価×延べ床面積で算出できます。国税庁が算出した構造別の工事費用によると、構造別の坪単価の目安は以下の通りです(※1)。なお、坪単価に外構費等は含まれていない場合がありますので、ご注意ください。
構造 坪単価全国平均目安
木造(W造) 68万3,000円
鉄骨鉄筋コンクリート造 104万9,000円
鉄筋コンクリート造 100万3,000円
鉄骨造(S造) 97万円
これらの坪単価はあくまでも目安であり、地域や立地、設備によって異なります。そのため、実際に地域の価格を調査したうえで、その後の収益で建設費を補えるかどうか慎重に検討しましょう。

不動産取得税

不動産取得税とは、土地やアパートを建築・購入する際に必要となる税金で、以下の式で求められます。
税額=固定資産税評価額(固定資産税の税額計算に使用される課税標準額)×税率(4%)
不動産取得税は、不動産取得時ではなく、取得後半年~1年後に請求される点に注意が必要です。なお、住宅取得に際しては、主に以下の特例措置を受けられます。
特例措置 注意点
軽減税率3%が適用される 2027年3月31日まで
新築住宅、中古住宅取得時、課税標準から最大1,200万円の控除を受けられる 床面積が50㎡以上(一戸建て以外の貸家は40㎡以上)240㎡以下であることが条件
上記以外にも、条件によって適用される特例措置がありますので、詳しくは各都道府県のサイトや国土交通省、総務省のサイトなどを確認してみてください。
●不動産取得税についてはこちら
●不動産取得税に係る特例措置についてはこちら

登記費用

不動産登記時に支払う登記費用は、登録免許税と司法書士への報酬の2つです。不動産登記にはいくつかの種類がありますが、アパート経営に関連する主な登記は以下の通りです。
・所有権移転登記
・建物表題登記
・所有権保存登記
・抵当権設定登記
・抵当権抹消登記
必要な登記は状況によって異なるため、事前に調べておくことが大切です。
自分名義で上記のような登記をする際には、登録免許税がかかります。登記する不動産別の税率は以下の通りです。
登記する不動産 登記の種類 計算式
購入した土地 所有権移転登記 不動産の価額×2.0%(2026年3月31日までは1.5%)
新築した建物(新築アパート) 所有権保存登記 不動産の価額×0.4%(2027年3月31日までは0.15%)
購入した建物(中古アパート) 所有権移転登記 不動産の価額×2.0%(2027年3月31日までは0.3%)
●登録免許税についてはこちら
●登録免許税の税率の軽減措置についてはこちら
アパート経営にかかる税金

印紙税

印紙税とは、アパートの建築や購入に伴って契約書や領収書といった文書を作成した際に、文書に印紙を貼って納める税金のことです。物件の売買や、工事会社にアパート建築の請負を依頼する際の契約書が課税の対象です。
印紙税は契約金額に比例して高くなります。具体的には以下の通りです。
記載された契約金額 支払額
50万円を超え100万円以下 1,000円
100万円を超え500万円以下 2,000円
500万円を超え1,000万円以下 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下 2万円
5,000万円を超え1億円以下 6万円
1億円を超え5億円以下 10万円
建設工事請負契約書に関しては、2027年3月31日までに作成されたものに限り軽減税率が適用され、本来よりも税率が低くなります。詳しい税額については、以下のサイトをご覧ください。
●印紙税額についてはこちら
●建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置についてはこちら

保険料

アパート経営を行う際には、予期せぬ自然災害やトラブルに備えて保険に加入する必要があります。具体的には以下のような保険があります。
・火災保険
・地震保険
・施設賠償責任保険
・孤独死保険
施設賠償責任保険とは、施設の欠陥や、施設内外での仕事の遂行によって生じた対人・対物事故による損害を補償する保険です。建物の外壁が落下して通行人を負傷させてしまった場合のように、思いがけない事故にも適用されます。
孤独死保険は、孤独死によって生じる「家賃の損失」や「居室の原状回復費用」などの金銭的損害を補償します。入居者の死亡後、空室の状態が長引いてしまったり、家賃を下げなければならなくなったりした場合にも安心の保険です。

ローンの事務手数料・保証料

アパートローンを借り入れる際には、事務手数料や保証料がかかります。事務手数料と保証料については以下の通りです。
名称 支払先 備考
事務手数料 ローンを借り入れる金融機関 借入額によって変動する定率型と、借入額にかかわらず一定の定額型がある
保証料 保証会社 保証料を支払うことで、ローンを返済できなかった際に保証会社が一時的にローンを弁済してくれる
アパート経営で加入する保険

アパート経営にかかる維持費用

アパート経営にかかる維持費用の内訳は以下の通りです。
・管理会社への手数料
・修繕・リフォーム費用
・ローン返済費
・税金
それぞれ詳しく見ていきましょう。

管理会社への手数料

アパートを維持するにあたっては、清掃や修繕などの管理業務が発生します。これらアパートの管理を業者に委託する場合、管理会社へ手数料を支払わなければなりません。管理手数料は、一般的に家賃収入の5%程度とされていますが、管理会社や地域によって変動することがあります。

修繕・リフォーム費用

アパートの大規模修繕は、一般的に約10年~15年おきに行われるのが目安です。通常の老朽化に加え、予想外のトラブルにより修繕が必要になることもあります。
さらに、入居者が退去する際は、原状回復義務により、物件を入居時の状態に戻す必要があります。その際の費用は、多くの場合アパート経営者が負担しますが、通常の使用を超えた傷や汚れは入居者が負担します。

ローン返済費

アパート経営を始めるにあたってローンを組む場合、毎月ローンを返済しなければなりません。ローンが長期的であり、借入金が高額であるほど支払う利子も増えるため、ローンを組む際は期間や金額について慎重に検討することが重要です。

税金

アパートの維持に際してかかる税金は主に以下の2つです。
・固定資産税
・所得税

固定資産税

固定資産税は、土地と建物それぞれに対して毎年納める必要があります。計算式は以下の通りです。
固定資産税=固定資産税評価額×標準税率(1.4%)
標準税率は自治体によって異なることがあるため、各自治体のホームページを確認しましょう。また、固定資産税評価額は3年ごとに見直され、土地の場合は公示価格の70%程度、建物の場合は再建築価格の50%~70%を目安に算定されます。

所得税

所得税は、アパート経営による不動産所得を含め、給与所得等のほかの所得と合わせた総所得に対して課されます。不動産所得とは、不動産にかかわる総収入から、固定資産税や保険料などの経費を差し引いたものです。不動産所得がマイナスの場合、ほかの所得と合わせて損益通算もできます。
●損益通算についてはこちら
アパート経営に必要な維持費用

アパート経営に必要な資金の目安

アパート経営を始めるには、多額の初期費用と維持費用がかかります。そのため、資金が不足している方のなかには、一部をローンで補う方も多いでしょう。しかし、借入額が増えるほど支払う利子も増えるうえ、十分な資金がなければ、ローンの審査も通りにくくなります。そのため、アパート経営を始める際には、初期費用の10%~30%程度の自己資金を用意しておくと安心です。

自己資金が足りないときのアパートローン

アパート経営を始める際、ローンを組む方も多いでしょう。しかし、その際のローンは金利の低い住宅ローンではなく、不動産投資用のローンであるアパートローンを選ぶ必要があります。アパートローンを扱う銀行は大きく2つに分けられます。それぞれ金利や借入期間などが異なるため、利用する前に比較検討しておきましょう。
民間金融機関 都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合など
公的金融機関 日本政策金融公庫、住宅金融支援機構など
また、アパートローンにはいくつか種類があります。主に以下の通りです。
・プロパーローン
・提携ローン
・ノンバンクからの融資
・住宅金融支援機構からの融資
1つずつ詳しく見ていきましょう。

プロパーローン

プロパーローンは、各金融機関が独自で融資するローンです。借主のニーズに合わせて、融資金額や金利などの条件が柔軟に設定されるのが特徴です。ただし、保証会社を介さないため、ローンの借主の支払いが困難になるといったリスクは金融機関が負います。そのため、審査が厳しくなる傾向があります。

提携ローン

提携ローンは、不動産会社と金融機関が提携して融資するローンです。不動産会社を通してローンを組むため手続きがスムーズで、金利の優遇もあって好条件の特徴があります。比較的審査に通りやすいケースもあります。一方、不動産会社へ手数料を支払うケースもある点、また、提携する金融機関が限られるため選択肢が限られる点には注意が必要です。

ノンバンクからの融資

信販会社や消費者金融などのノンバンクから融資を受けることもできます。金融機関に比べて、審査基準に柔軟性があり、短期間で審査結果が出るのがメリットです。一方で、一般的に金利が高く、毎月の返済額が高くなる傾向があります。

住宅金融支援機構からの融資

独立行政法人住宅金融支援機構は、「子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資」と「サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資」の2種類の融資プランを提供しています。固定金利であるため返済計画を立てやすく、返済期間は15年または35年を選択できます。反面、審査基準や条件は、金融機関に比べると厳しくなるのが特徴です。
●住宅金融支援機構の融資についてはこちら
経営を始めるときに組むアパートローン

初期費用と併せて知っておきたいアパート経営のリスク

アパート経営のリスクは、主に以下の通りです。
・空室リスク
・災害リスク
・アパート一棟の売却ができないリスク
・ローンが払えなくなるリスク
順番に詳しく見ていきましょう。

空室リスク

思うように入居者が見つからず空室が多くなってしまうと、かかる費用に対して十分な収益を得られない恐れがあります。アパート経営を検討する場合は、事前にニーズのある立地や間取り、設備などを調査し、相場に合った家賃設定を行わなければなりません。
アパート経営は成功すれば多くの収入が見込める一方、経営がうまくいかず思うように収入が得られない恐れも伴います。特に大きなお金が動くアパート経営は、慎重に検討しましょう。
●アパート経営で失敗するケースや対策についてはこちら

災害リスク

日本は地震、台風、津波などの自然災害が多い国です。経営するアパートの損害が予想を上回って大きくなることや、最悪の場合、建物が滅失してしまう恐れも考えられます。そのため、被害を最小限に抑えるために、建物は耐震性や耐久性に優れた状態で維持することが重要です。
さらに、万が一の災害に備えてあらかじめ保険に加入しましょう。補償範囲をよく確認し、震災だけでなく、水災、人災に至るまで、考えられるリスクを網羅した保険を選ぶと安心です。

アパート一棟の売却ができないリスク

賃貸管理が難しくなったり、空室が増えてきたりすると、アパート一棟の売却を検討することもあるでしょう。ただし、売り出すタイミングや物件の条件によっては、需要が見込めず、希望価格で成約できない恐れもあります。
アパート一棟の購入検討者は、不動産投資の一環として利益が得られるかどうかを重視して購入を判断する傾向があります。そのため、老朽化が進んでいたり、立地条件が悪かったりする場合は売却が難しくなるでしょう。
アパートの売却や、土地を所有している場合は更地にして転用するなど、アパート経営が困難になるリスクも考慮し、計画を立てましょう。複数の選択肢を提案してもらえるため、賃貸経営や売却、土地活用など、幅広いサービスを提供している不動産会社に相談するのがおすすめです。

ローンが払えなくなるリスク

アパート経営は初期費用が高額なため、多くの人がローンを組みます。ローンの返済は毎月発生しますが、借主の退去で家賃収入が減ったり、災害や修繕などで思わぬ出費があったりすると、ローンの支払いが困難になる恐れがあります。不測の事態に備えられるよう、無理のない返済計画を立てましょう。
アパート経営に伴うリスク

アパート経営の初期費用が不安なら駐車場経営も検討しよう

これまで、アパート経営に必要な初期費用について、具体的な内訳や維持費用などを解説してきました。経営が成功すれば多くの収入を得られますが、初期費用や維持費用が高いため、ローンを組む場合はそれらの返済に関するリスクも考えなければなりません。
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※1 出典:「地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)【令和6年分用】」、国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/h30/0018008-045/07.htm
(最終確認日:2025年3月28日)
※2 立地等によってはお受けできない場合もございます。また、建物解体、アスファルト舗装、外構、固定資産税などの租税公課や町内会費はオーナーさまのご負担となります。
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※立地等によってはお受けできない場合もございます。 ※建物解体、アスファルト舗装、外溝、固定資産税などの租税公課や町内会費はオーナーさま(土地所有者様)のご負担となります。
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