駐車場経営は初期費用の面で有利
駐車場経営は、少ない初期費用で始められる土地活用方法といわれています。マンションやアパートなどの賃貸住宅経営のように、建物の建築費がかからないためです。
駐車場経営にかかる初期費用は、土地整備費や設備費が主となります。しかしこれらの費用も、駐車場の種類や経営方法によっては抑えられる場合があるのです。
そこで今回は、駐車場経営の初期費用について、経営の基礎知識とともに詳しく解説します。「土地を有効活用したいけれど、費用のことが分からず不安」という人は、ぜひ参考にしてくださいね。
●「駐車場経営の初期費用」に関する
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初期費用以外での駐車場経営のメリット・デメリット
駐車場経営は初期費用を抑えやすいだけでなく、それ以外にもさまざまなメリットがあります。一方で、ほかの土地活用にはないデメリットもあり、知らずに始めると後悔してしまうことも。初期費用以外でのメリットやデメリットについても知っておきましょう。
駐車場経営のメリット
駐車場経営の大きなメリットは、やはり初期費用が少なく済むことです。マンションやアパート経営を始めるには多額の建築費がかかりますが、駐車場経営なら建物は基本的に必要ありません。
ただし、土地の状況に応じて整備費がかかる場合はあるので注意しましょう。
こうした初期費用の少なさは、準備期間の短さにもつながります。経営に必要な準備は、整地(土地の凹凸を平らにならし、草木などを撤去すること)やアスファルト舗装、料金精算機の設置くらいなので、半月~1ヵ月もあれば経営スタートできるでしょう。
また、駐車場経営には土地の広さや形の制限を受けにくいという利点もあります。賃貸住宅経営には向かないような狭い土地・いびつな土地でも、車を1〜2台駐車できるスペースがあれば十分始められるので、土地活用を諦めずに済みますよ。
そして、駐車場経営の安心な点は「やめやすい」というところです。たとえば賃貸住宅経営の場合、入居者と普通借家契約を結ぶと、貸主の一方的な理由で解約することはできません。しかし、駐車場の賃貸借契約は貸主の意思で解約できるので、事前予告をすれば2ヵ月ほどで退去してもらえます。撤退した後、土地をほかの用途に転用したい場合も、駐車場はほぼ更地に近い状態なので転用がスムーズです。
「将来は賃貸住宅経営をしたいので、とりあえず何年か駐車場経営をして資金を作る」という選択もおすすめですよ。
駐車場経営のデメリット
駐車場経営を始める前に知っておきたいデメリットは、税制上の優遇が少ないという点です。一戸建てやアパート、マンションが建っている「住宅用地」は固定資産税の減税対象になりますが、駐車場の場合は対象から外れるため、固定資産税の満額を支払うことになってしまうのです。「空き家の一戸建てを解体して土地活用したい」と考えている人は、上記も踏まえたうえでの検討が必要です。
また駐車場経営では、土地にアスファルト舗装を行ったり、街灯や精算機などの専用設備を設置したりした際に固定資産税が課せられる場合があります。ただし、設備にかかった費用が150万円未満であれば課税対象にはなりません。※1
ちなみに、被相続人が駐車場経営を行っていた土地を相続した場合、「小規模宅地の特例」の特定事業用宅地の要件に合えば、一定の面積部分の相続税が減免されます。特例の要件や税額などについては、事前に税理士をはじめとする専門家へお問い合わせください。※2
駐車場の種類と経営方法とは?
駐車場経営にかかる初期費用は、「どの種類の駐車場で、どのように経営されているか」によって変わります。ここでは、駐車場の種類と経営方法について詳しく見ていきましょう。
駐車場の種類
駐車場の種類は、「月極(つきぎめ)駐車場」と「コインパーキング」の2つに分けられます。
月極駐車場
月極駐車場とは、利用者と1ヵ月単位で賃貸契約を結ぶ駐車場のことです。各利用者から受け取る毎月の賃料が収入となり、利用者がいる限り安定的な収入を得られます。また、駐車場の賃貸借契約は、借地借家法ではなく民法が適用されます。そのため、先にもお伝えしたように貸主が事業をやめたいときは利用者に事前予告をすれば、解約が可能です。なお、契約期間の内の解約を想定する場合は、「期間内解約の特約」を定める必要があります。賃貸借契約は、慎重な作成を心がけましょう。
初期費用の面から見ると、看板や料金精算機の設置がいらない分、次に解説するコインパーキングよりも初期費用は抑えやすいといえます。
コインパーキング
コインパーキングとは、駐車時間分の料金を支払う時間貸し駐車場のことで、契約者との書面の取り交わしといったことが必要なく、誰でも利用することができます。
初期費用の面から見ると、月極駐車場より初期費用はかかりますが、商業施設や繁華街の近くといった数時間の駐車ニーズが高いエリアでは、月極駐車場よりも多くの収益を得られる可能性があります。
反対にいうと、上記のようなエリア以外にコインパーキング経営は向いていないため、立地や周辺環境の事前調査をきちんと行うことが大切です。
駐車場の経営方法
駐車場経営の方法には、「自主管理方式」「管理委託方式」「一括借り上げ方式(サブリース)」の3つがあります。どの経営方法を選ぶかによって、初期費用のほかに、経営開始後の維持費にも差が出てきます。
自主管理方式
自主管理方式とは、駐車場の運営管理を自分自身で行う経営方法のことです。コインパーキングであれば料金精算機の導入設置、また掃除やトラブル対応などを、自分1人で行うことになります。そのため、初期費用の負担も管理の手間も大きいのですが、駐車場経営で得られる収入は全て自分のものになるという点がメリットです。
駐車場の経営を安定させるには、事前のリサーチや宣伝活動もしっかり行う必要があります。そのエリアの駐車ニーズや競合駐車場の料金を調べる、契約者を集めるために看板や広告を出すといったことまで、全て自分で行える人に向いている経営方法といえるでしょう。
管理委託方式
管理委託方式とは、駐車場の管理のみを駐車場運営会社や管理会社に委託する経営方法のことです。管理委託料を支払うことで、駐車場の掃除や巡回、トラブル対応のほか、月極の新規契約者募集や契約手続きなども行ってもらえます。また、初期費用は基本的にオーナー負担となりますが、管理会社によっては設備にかかる初期費用を一部負担、あるいは全額負担してもらえる場合もあります。管理委託料とのバランスで検討することが有益です。
運営会社に管理委託する点は、次に紹介する「一括借り上げ方式(サブリース)」に似ていますが、経営主体はあくまでオーナー自身となるのが、一括借り上げ方式との違いです。運営会社から経営アドバイスももらえるので、「一括借り上げより高い収入を狙いたい」「立地がよいので収益性に自信がある」という人には向いている方法です。
一括借り上げ方式(サブリース)
一括借り上げ方式とは、土地を駐車場運営会社に貸し出す経営方法のことで、一般的にコインパーキングに用いられます。
初期費用の面から見ると、料金精算機や看板などの設備費は運営会社に負担してもらえます。また、運営会社から毎月一定の賃料(借地料)が支払われるので、駐車場の経営状況に関係なく安定した収入を得られるうえ、駐車場の掃除やトラブル対応といった管理も全て任せられます。「土地活用が初めてでよく分からない」「副業なので手間はなるべく抑えたい」という人には、リスクや負担が少なくおすすめの経営方法といえるでしょう。
一方、一括借り上げ方式の場合は、収入はあくまでも運営会社からの一定の賃料であるため、自主管理方式のように駐車場経営で得たお金を全額収入とすることはできません。時間や手間がかかってもより多く収益を得たいという人には向いていないといえます。
以上のように、駐車場経営は種類と経営方法によってさまざまな違いがあり、初期費用のかかり方も異なります。「結局、どれが一番いいの?」と、分からなくなってしまった人も多いのではないでしょうか?そこで次項では、駐車場経営にかかる費用について、より具体的に比較したものをご紹介しましょう。
駐車場経営にかかる初期費用と維持費
ここでは、駐車場経営の初期費用を、月極駐車場の場合とコインパーキングの場合に分けて比較していきます。実際に経営が始まった後の維持費も含めて、検討してみましょう。
月極駐車場
月極駐車場は、コインパーキングに比べると初期費用を抑えやすいといえます。
初期費用
月極駐車場の場合は、コインパーキングのような料金精算機が必要ありません。そのため、初期費用は土地整備にかかる費用が中心ということになります。
土地を舗装する際に一般的なアスファルト舗装の場合、費用は1㎡につき4,000~5,000円/㎡程度が目安です。対して、耐久性が高いコンクリート舗装の場合、費用は1㎡につき8,000~1万円/㎡程度と割高になります。ここに、駐車マスのライン引き、車止めや看板の設置といった費用が加わることになるでしょう。できるだけ初期費用を抑えたい人は、更地に砂利を敷いて区画ロープで駐車マスを作る方法でも対応できます。
ちなみに、土地に建物が建っている場合は上記の費用に加え、建物を取り壊すための解体費用がかかります。具体的な費用は建物の大きさや構造によって異なり、木造は1坪につき3万~5万円、鉄骨造は1坪につき5万~7万円、RC(鉄筋コンクリート)造は1坪につき6万~8万円程度が相場となるでしょう。
維持費
月極駐車場の維持費には、賃料の集金や清掃などの運営費、固定資産税や収入にかかる所得税、トラブルが起きた際に備えた保険料などが挙げられます。このうち税金は、土地の広さや売上によって大きく差が出る部分です。また、管理業務を委託する場合は、ここに管理委託料も加わることになります。
コインパーキング
コインパーキングの場合は、経営方法によって初期費用も維持費も大きく変わるのが特徴です。
初期費用
コインパーキングの場合も、建物が建っている場合は初期費用として解体費用が必要です。さらに、土地整備費に加えて設備費もかかります。設備費に挙げられるのは、料金精算機(1台40万~50万円程度)、ロック板(1台10万円程度)、必要に応じて監視カメラなどです。
このような設備には、設置や電気の配線などの手間もかかります。そのため、先に述べたように、コインパーキングの場合は一括借り上げ方式で運営するのが一般的です。一括借り上げ方式なら、設備費についてオーナーが負担することはありません。
維持費
コインパーキングの維持費は、月極駐車場と同じく運営費や税金のほか、機械のメンテナンス費、電気代、また警備会社との連携にかかる費用なども挙げられます。こうした維持費についても、一括借り上げなら運営費は運営会社の負担となります。
上記を整理すると、初期費用を安く抑えられるのは舗装なしの月極駐車場、次に一括借り上げのコインパーキングということになるでしょう。ただし、その後の維持費については、運営費がかからないコインパーキングのほうがお得になる場合もあります。
駐車場経営の収益はどれくらい?
駐車場経営には初期費用がかかりますが、順調に収入が得られれば、初期費用は早く回収できます。ここでは、駐車場経営にどのくらいの収益性があるのかを見ていきましょう。
駐車場経営の収入事例
駐車場経営を実際に行うと月にどのくらいの収入が入るのか、自主管理方式の場合と一括借り上げ方式の場合でそれぞれ事例を見てみましょう。
自主管理方式で月極駐車場を経営する場合
月3万円×10台の月極駐車場を個人で経営した場合、1ヵ月で得られる賃料は30万円です。ここから、運営に必要な維持管理費を差し引いたものが収入となります。また、利用契約者がいない場合は、その分の収入は減ります。※3
一括借り上げ方式でコインパーキングを経営する場合
駐車場運営会社の一括借り上げで時間貸し駐車場を運営する場合、土地オーナーは駐車場の経営状況にかかわらず運営会社から毎月一定の賃料を受け取ります。
たとえば、駐車場10台分の土地をコインパーキングとして一括借り上げで貸し出した場合、土地オーナーは駐車場の稼働状況にかかわらず、1台3万円×10台分で月30万円を受け取ることができます。※3
詳しい内容については以下のページでご紹介しているのでぜひご覧ください。また、駐車場経営に興味を持った方はぜひ三井のリパークへお問い合わせください。※4
ただし、自主管理方式も一括借り上げ方式も、賃料は土地の相場や諸条件によって変わる点に注意が必要です。
駐車場経営の収益性を判断する要素
その土地で駐車場を経営して成功するかどうかは、主に次の2点で判断できます。
立地条件
駐車場経営において最も大切なのは、その土地が駐車場経営に適しているかどうかです。駅や商業施設、繁華街などに近い土地なら、コインパーキングとして高いニーズがあるでしょう。また、駐車スペースの少ない住宅地の中や集合住宅の近くなら、月極駐車場のニーズが高いといえます。また、道路から入りやすいかどうかも重要なポイントです。
実質利回り
利回りとは、初期費用に対する収益の割合を示したもので、利回りが高いほど初期費用を早く回収できるということになります。この利回りには「表面利回り」と「実質利回り」があり、それぞれ次のように計算できます。
・表面利回り = 年間の収入 ÷ 初期費用 × 100
・実質利回り = (年間の収入 ‐ 諸費用) ÷ 初期費用 × 100
ちなみに、実質利回りの計算にある「諸費用」とは、経営にまつわる維持管理費、税金などを指します。土地活用や不動産投資においては、こうした諸費用を差し引いた実質利回りのほうを重視しなければなりません。
駐車場経営を始める前には、実質利回りのほうを自分で計算してみるほか、運営会社から収支プランを提出された際も、どのように計算したものかよく聞いてみるようにしましょう。
●駐車場経営を成功させるためのポイントについては
こちら
初期費用もリスクも抑えるなら一括借り上げ!
駐車場経営は、賃貸住宅経営に比べると初期費用を抑えやすいといわれますが、土地整備費や設備費などは状況に応じて必要です。また、こうした初期費用を早く回収できるかどうかは、稼働率によっても異なります。高い稼働率で経営を安定させるには、土地に合った駐車場の種類を選ぶことも重要です。
「土地はあるけれど高い初期費用は捻出できない」という人や、「初心者なので稼働率の見通しに自信がない」という人は、一括借り上げ方式で全てプロにお任せするのがおすすめです。
一括借り上げ方式のメリットは、駐車場経営に必要な設備費や運営費がかからない点です。※4また、毎月一定の賃料が運営会社から支払われるので、経営状態にかかわらず安定収入を得られます。さらに、利用者の募集や個別の契約・解約手続き、駐車場内でのトラブル対応といった管理業務も任せられるので、副業で駐車場経営を始めたい人にも手間が少なく安心です。
特に、設計・施工にかかる初期費用や運営管理にかかる手間が多いコインパーキングの場合、一括借り上げ方式なら少ないリスクで楽に続けやすいといえるでしょう。
三井のリパークでは、一括借り上げ方式で全てお任せ。料金精算機や看板の設置費用、運営管理費を負担します。定期的な清掃を行うほか、トラブルの際は24時間365日コールセンターが対応するので、管理体制も万全です。ご相談はWEB上のフォームで24時間受け付け中!まずは、お気軽にお問い合わせください。※4
「駐車場経営の初期費用」に関するよくある質問
この記事では、駐車場経営の初期費用やそのほかの基礎知識についてご紹介してきました。最後に、覚えておきたい大切なポイントを3つおさらいしましょう。
駐車場経営にかかる初期費用の内訳は?
土地整備費と、看板や料金精算機などが主な設備費です。これらの初期費用の金額は、駐車場の規模や経営方式によって変わります。
駐車場経営の初期費用を早く回収するには?
経営開始後の稼働率が安定すれば、早く回収できるでしょう。そのためには、事前に立地と利回りをチェックすることが大切です。
駐車場経営の初期費用を抑えるには?
駐車場運営会社による一括借り上げ方式で経営すれば、駐車場に必要な看板や料金精算機といった設備費は全て負担してもらえます。
※2出典:国税庁「No.4124相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
(最終確認日:2023年3月23日)
※3表記の金額は一例です。
※4立地等によってはお受けできない場合もございます。また、建物解体、アスファルト舗装、外構、固定資産税などの租税公課や町内会費はオーナーさまのご負担となります。