2025.05.30

土地ありのアパート経営は有利?始めるために必要な自己資金も解説

土地ありのアパート経営が有利とされる理由から注意点、資金がない場合の対処法まで詳しく解説します。
監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石 泉
株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
https://www.izumi-ohishi.co.jp/profile.html

アパート経営なら「土地あり」が有利!その理由は?

アパート経営は土地ありが有利な理由としては、主に以下の3つの理由が挙げられます。
・高い利回りで運用できる
・金融機関からの融資を受けやすい
・建物や設備にお金をかけられる
それぞれについて詳しく見ていきましょう。

高い利回りで運用できる

土地ありでアパート経営を開始する場合、土地の購入費用が不要となる点が最大の強みです。これにより、初期投資額を大幅に抑えられます。
ここでいう「利回り」とは、投資額に対してアパート経営から得られる利益の割合です。利回りには「実質利回り」と「表面利回り」の2種類があります。ここでは表面利回りを用いてシミュレーションを行ってみましょう。
●アパート経営における利回りについてはこちら
たとえば、以下のような条件のアパートがあるとします。
総戸数 8室
家賃 8万5,000円
建物価格 8,000万円
土地価格 1億5,000万円
このアパートにおける、土地ありと土地なしの表面利回りの計算は以下の通りです。
比較項目 土地あり 土地なし
土地代 0円 1億5,000万円
建物代 8,000万円 8,000万円
年間家賃収入 816万円
(8室×8万5,000円×12ヵ月)
816万円
(8室×8万5,000円×12ヵ月)
表面利回り
(年間家賃収入÷物件価格×100)
10.2%
(816万円÷8,000万円×100)
3.5%
(816万円÷2億3,000万円×100)
※上表はあくまでも例です。土地や建物等の条件によって異なりますのでご注意ください。
上記の比較では空室や諸経費を考慮せずに計算していますが、いずれにしても土地ありのほうが利回りが高くなると分かります。
表面利回りのシミュレーションをする様子

金融機関からの融資を受けやすい

土地があると金融機関から資産保有者と見なされるため、アパートローンの借り入れにおいて有利に働きます。
具体的には、土地という担保があることで融資の信用力が高まり、借入可能額が増加する可能性があります。結果としてアパートの戸数を増やす、最新設備を導入するなど、事業計画の選択肢を広げられるでしょう。
加えて十分な自己資金を用意できる場合、金融機関は滞納リスクが低いと判断し、より低い金利で融資を受けられる可能性も出てきます。これは、長期的な収益性向上に大きく影響する要素です。
銀行からの融資

建物や設備にお金をかけられる

土地ありの場合、土地の購入費用が不要なため、その分の資金を建物や設備への投資に充当できます。これは物件の競争力と資産価値を高めるうえで、非常に大きな利点となるでしょう。
具体的には、以下のような施策が可能です。
・建物のデザイン性を高める
・セキュリティーを高める
・質の高い施工を行う
・最新設備を導入する
上記のような取り組みは周辺物件との差別化を明確にし、入居者からの人気を高める効果があるでしょう。これにより、空室リスクを低減できるだけでなく、周辺物件よりも高い家賃が設定でき、収益性の向上が見込めます。
さらに、質の高い施工や最新設備の導入は、建物の損傷や設備故障のリスクを軽減します。結果として将来的な修繕費用を抑制し、ランニングコスト(維持費用)の削減や長期的な経営の安定化に寄与するでしょう。
アパートに設備投資を行う様子

土地ありでアパート経営を行うときの注意点

土地ありでアパート経営を行う際の最大の注意点は立地を選べない点です。立地はアパート経営の成否を大きく左右する要素であるため、以下の2つの点に特に気を付けましょう。
・賃貸ニーズが少ない可能性がある
・建物に制限がかかる場合がある
これからそれぞれについて詳しく見ていきます。

賃貸ニーズが少ない可能性がある

所有する土地の立地によっては、賃貸ニーズが少ない場合もあります。このような場所では空室リスクが高まり、アパート経営の安定性を損なう要因となり得ます。
アパート経営を成功させるには、空室率を低く抑えることが不可欠です。空室が増加すると家賃収入が減少し、最悪の場合、ローンの返済ができずに経営が立ち行かなくなることもあります。
賃貸ニーズが少ないエリアに土地を所有している場合は、競合物件との差別化を図り、空室を減らすための工夫が必要です。具体的な対策としては以下のような例が挙げられます。
・ペット可の物件にする
・高齢者専用住宅にする
・防音性の高い部屋にする
・無料でWi-Fiを使えるようにする
賃貸ニーズが低いエリアでアパート経営を始める場合、本当に経営が成り立つのか慎重に検討してから始めることをおすすめします。
アパート経営を行うときの注意点

建物に制限がかかる場合がある

アパート経営の規模は、所有する土地の形状や面積によって大きく左右されます。土地には都市計画法といった法令規則にもとづき、容積率や建ぺい率などの建築制限があります。これらの制限は各自治体のWebサイトで必ず確認しておきましょう。
さらに、土地の形状が不整形といった建築が困難なケースでは、通常の建築よりも高額な建設費用が発生することもあります。これは、設計上の工夫や特殊な工法が必要になるためです。
建物の建築制限

土地ありのアパート経営にかかる資金は?

土地ありの場合、アパート経営にかかる資金は大きく以下の3つです。
・ローンの頭金(自己資金)
・建築費用
・諸費用
順番に費用の詳細について見ていきましょう。
アパート経営にかかる資金

ローンの頭金(自己資金)

アパートローンを利用する場合、一般的には自己資金で頭金を用意する必要があります。頭金の相場は、初期費用の10%~30%程度とされています。
頭金を準備するためには、必要費の総額を把握することが欠かせません。必要費は、大きく分けて建築費用と諸費用に分類されます。それぞれの内訳について、以下で詳しく解説します。

建築費用

アパートのおよその建築費は、坪単価×延床面積で計算できます。坪単価は構造によって異なり、目安は以下の通りです。(※1)なお、坪単価には外構費等を含まない場合がありますので、ご注意ください。
構造 坪単価全国平均目安
木造(W造) 68万3,100円
鉄骨鉄筋コンクリート造 104万9,400円
鉄筋コンクリート造 100万3,200円
鉄骨造(S造) 97万200円
※3.3㎡/坪として算出。
上記はあくまで目安であり、坪単価は地域により異なるため注意が必要です。

諸費用

建築費用以外の主な費用について一覧表にまとめたので、参考にしてください。
比較項目 概要 金額(※)
不動産取得税 建物や土地を取得した際に納める税金 固定資産税評価額(課税標準)×税率(3%)
所有権保存登記の登録免許税 新たに建物ができたことを登記する 固定資産税評価額(課税標準)×税率(0.4%)
抵当権設定の登録免許税 アパートローンを組む際に必要 債権金額(課税標準)×税率(0.4%)
印紙税 文書や契約書などを作成した際に必要な収入印紙代 契約金額により異なる
例)5千万円を超え1億円以下の場合6万円
(そのほかの金額は国税庁のサイトを参照)
各種保険料 火災保険や地震保険など 10年契約で30万円~50万円
事務手数料 アパートローン借り入れ時にかかる 1件あたり5万円~10万円
司法書士手数料 登記を司法書士に依頼する際の手数料 1万円~10万円
※税率は、取得する不動産や特例の対象か否かによって異なります。詳しくは税務署、または税理士等の専門家にご確認ください。
不動産取得税には特例措置があり、アパート建設時には、一定の条件下で税負担が軽減されます。具体的には、各戸の床面積が40㎡以上240㎡以下である場合、課税標準額から1,200万円(長期優良住宅の場合は1,300万円)が控除されるほか、2027年3月31日まで軽減税率3%が適用されます。
ただし、上記はあくまで目安です。実際の金額や詳細な条件、手続きについては必ず税理士などの専門家や、関連する企業・法人の公式サイトなどで最新かつ正確な情報を確認しましょう。
●不動産取得税に係る特例措置についてはこちら
●登録免許税の税額についてはこちら
建築費以外の費用

土地ありでも資金がない場合のアパート経営方法5選

土地は所有しているが、資金がないという場合でもアパート経営を行う方法はあります。以下は、この場合における一般的な5つの方法です。
・土地の一部を売却する
・賃貸併用住宅にする
・ファミリー経営のアパートにする
・土地を買い替える
・駐車場経営で資金をためる
以下でそれぞれ詳しくご紹介します。
不動産経営の選択肢

土地の一部を売却する

所有する土地の一部を売却し、その売却代金をアパート建設費用に充当する方法は有効な選択肢といえるでしょう。一般的なアパートの居室部分の延床面積は80坪~100坪程度です。土地を売却する際には、最低でも60坪程度の延床面積を確保できるとよいでしょう。2階、3階と延床面積を上方向に拡張できるアパートでは、必ずしも広大な敷地である必要ありません。アパート経営に必要最低限の土地を残して、それ以外を売却することで資金調達が図れるでしょう。

賃貸併用住宅にする

自宅とアパートが一体となった賃貸併用住宅を建設することも有効な選択肢の1つです。この場合、自宅部分には住宅ローンが、アパート部分にはアパートローンが適用されます。住宅ローンの特徴としては、フルローン(全額融資)での借り入れが可能であり、自己資金で頭金を用意しなくてもよい点が挙げられます。そのため、頭金が必要なのはアパートローンのみです。ただし、住宅ローンの適用を受けるためには、賃貸併用住宅全体の床面積の50%以上が自宅部分であること等の要件があるため、注意が必要です。
また、既存の自宅を売却して賃貸併用住宅に住み替える場合、売却資金を建設費用に充当できます。これにより、設備への投資資金が確保でき、結果として新築の自宅に住めるだけでなく、競合物件との差別化を図れるというメリットもあります。

ファミリー経営のアパートにする

家族を構成員とするアパート経営の法人を設立し、その法人名義でアパートを建築する方法も考えられます。この方法では、家族がそれぞれ出資して会社の資本金とします。この資本金が、アパート建築における自己資金と見なされるため、個人で準備するよりも多額の資金調達が可能になるのです。さらに、アパート経営による家賃収入は、役員報酬として家族に分配できます。役員報酬は会社の経費として計上できるため、所得税や法人税の節税効果が見込めるでしょう。
相続という観点でも、土地と建物が会社の所有物である場合には、相続税の対象となるのは故人の出資した資本金のみとなり、相続税の負担軽減につながります。
このように、法人設立によるアパート経営は通常よりも多くの自己資金を準備できるだけでなく、さまざまな節税対策を講じられます。ただし、会社設立費用、社会保険料、税理士報酬などの追加費用が発生する点や各種手続きに時間を要する点には注意しましょう。
ファミリー経営のアパートにするか悩む様子

土地を買い替える

所有する土地を売却し、よりアパート経営に適した立地の土地に買い替えることも、有効な戦略の1つです。一般的に、アパート経営に適した土地とは、以下のような特徴があります。
・駅から徒歩10分圏内
・開発予定がある
・周辺人口が多い
土地の選定は専門的な知識を要するため、自分自身だけで判断するのではなく、不動産会社の担当者をはじめとした専門家に相談しながら進めることがおすすめです。

駐車場経営で資金をためる

アパート経営に必要な資金が不足している場合、初期費用を抑えた土地活用で資金を調達した後、アパート経営に移行するという段階的な方法も有効です。特に駐車場経営は建物を建築する必要がないため、少ない初期費用で始められるでしょう。さらに、毎月安定した賃料が見込めるだけでなく、アパート経営の目処が立ったときに素早く土地転用ができます。そのため、将来的なアパート経営に向けた資金計画の見通しを立てやすいというメリットがあります。
また、駐車場運営会社による一括借り上げ方式を選択すれば、駐車場運営をプロに任せられるため、オーナー自身の負担をさらに軽減できるでしょう。
駐車場経営

駐車場経営は初期費用が安い!

土地を所有している人がアパート経営を行うことは、土地を持っていない場合よりも有利に働くことが多いことをお伝えしました。とはいえ、所有している土地がアパート経営に適していない立地だったり、土地の形状によって予算以上の建築費がかかってしまったりする場合は、アパート経営には向いていないのかもしれません。また、アパート経営に最適な土地を所有していても、建物の建築にかかる費用を用意できなければ、自己資金確保のための対策を考える必要があります。
そこで、アパート経営が難しい土地の有効活用、将来のアパート経営に向けた自己資金確保のためには、その土地を利用した駐車場経営がおすすめです。駐車場経営は建物を建てる必要がなく、初期費用を抑えられるため、自己資金が少ない方でも始めやすい土地活用方法です。駐車場運営会社による一括借り上げ方式で始める場合、設備費や運営費を負担してもらえる場合も多く、運営会社から毎月一定の賃料(借地料)が支払われるため、安定した収入を得られます。
また、駐車場経営は、アパート経営と比較しても設備の撤去に時間や費用がかからず、ほかの土地活用に切り替えやすいという特徴があります。そのため、必要な自己資金を確保できたらすぐにアパート経営へ移行できるでしょう。
三井のリパークでは、設備の導入や運営にかかる費用を負担しているため、初期費用を抑えることが可能です。(※2)一括借り上げ方式では、プロに任せることで安定した収入を得られる可能性も高く安心です。所有している土地の条件ではアパート経営が難しい方、自己資金確保のために持っている土地を有効活用したい方は、ぜひ三井のリパークにご相談ください。
●駐車場経営・土地活用のご相談はこちら
●土地活用の方法についてはこちら
●駐車場経営にかかる初期費用や経営方式についてはこちら
※1 出典:「地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)【令和6年分用】」、国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/h30/0018008-045/07.htm
(最終確認日:2025年3月25日)
※2 立地等によってはお受けできない場合もございます。また、建物解体、アスファルト舗装、外構、固定資産税などの租税公課や町内会費はオーナーさまのご負担となります。
駐車場経営
お役立ち情報一覧へ戻る
三井のリパークにご相談ください!
運営管理もすべて当社におまかせ!
初期費用 設備費用 運用費用 0円
※立地等によってはお受けできない場合もございます。 ※建物解体、アスファルト舗装、外溝、固定資産税などの租税公課や町内会費はオーナーさま(土地所有者様)のご負担となります。
コインパーキング経営なら三井のリパーク。
お気軽にご相談ください!