2025.11.13

農地は駐車場に転用できる?費用についても解説

一部の農地は、届け出により駐車場に転用することが可能です。この記事では、農地転用における規制や申請の手順について詳しく解説します。
監修者:不動産コンサルタント 秋津 智幸
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。不動産コンサルタントとして、物件の選び方から資金のことまで、住宅購入に関するコンサルティングを行なう。

農地は駐車場にできるが「農地転用」が必須

市街化区域内の一般農地であれば、駐車場への転用は可能です。しかし、農地を転用するには、「農地転用」と呼ばれる農地法にもとづく手続きが必要です。
農地は、日本の食料自給を支えるための貴重な資源として、農地法によって厳しく規制され、保護されています。そのため、農地を駐車場や宅地、資材置き場といった農地以外の目的で利用するには、その規制を解除するための許可や届け出が必要です。この手続きが「農地転用」です。
なお、この手続きを行うことで全ての農地が転用できるわけではありません。農地の立地条件や状態、周辺の市街化の状況などにもとづき5つの区分に分類した「農地区分」によって、転用の可否が異なります
農地を転用するには、主に以下2つの法律上の制限を確認し、転用可能な場合は必要な手続きをしなければなりません。
・農地法の制限
・都市計画法の制限
以下で詳しく解説します。
駐車場に転用可能な農地
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農地法の制限

農地法の目的は、国民全体の食料安全保障にかかわる公共性の高い資源である農地を守ることです。農地を駐車場にするという行為は、農地の保護と相反するものであるため、個人の判断で自由に行うことはできません。農地転用には行政への届け出や許可が必要になります。
農地転用の可否は、農業振興地域制度の区分と個別の農地転用を規制する農地転用許可制度の農地区分によって異なります。5つの農地区分と農地転用の可否は以下の通りです。
農地区分 農地の概要 農地転用の可否
農業振興地域内の農用地区域内農地 市町村によって「農業振興地域」とされた区域内の農地のうち、市町村がおおむね10年を見通して農用地として利用すべき土地として設定した区域 原則不許可
農業振興地域内の農用地区域以外(農振白地地域)の農地 農業振興地域内の農用地区域(上記)以外の農地 農地転用については、以下の第1種から第3種の農地区分に該当するかによって判断
第1種農地 0ヘクタール以上ある農地や生産性の高い農地
第1種農地のなかでも、「市街化調整区域」内の特に農業に適した農地は「甲種農地」に分類される
原則不許可
第2種農地 市街地として発展する可能性のある区域内の農地で、農業公共投資の対象となっていない小集団の生産性の低い農地 農地以外の土地や第3種農地に立地困難な場合は許可
第3種農地 市街地区域内にある農地 原則許可(生産緑地指定を受けた農地以外)
5つの農地区分のうち、届け出ることで駐車場への転用が原則可能な農地に該当するのは、市街化区域内にある生産緑地を除く第3種農地です。
農業振興地域内の農用地区域内農地、第1種農地については例外的に許可されるケースもありますが、原則不許可です。第2種農地は土地改良事業の対象となっていない生産能力の低い農地の場合、農地転用が許可されます。
自分の所有する農地が、上記のいずれの農地に該当するかは、市町村の農業を担当する課および農業委員会で確認が可能です。

都市計画法の制限

都市計画法で定められた区域でも、農地転用の難易度を左右します。都市計画法では、「市街化区域」と「市街化調整区域」の2つの区域が指定されます。指定されていない区域は「非線引き区域」といわれ、各区分で農地転用許可に違いがあります。主な違いは、以下の通りです。
区域の種類 どのような区域か 都道府県知事による農地転用許可
市街化区域 ・既に市街地を形成している区域
・今後10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域(※1)
不要
(所在地の市町村農業委員会への届け出のみ)
市街化調整区域 ・市街化を抑制すべき区域
・自然環境を保全することが目的で、原則として開発や建築が厳しく制限される
必要
(事業の必要性、周辺農地への影響、計画の実現可能性などが詳しく審査される)
非線引き区域 ・市街化区域と市街化調整区域のように明確な線引きがされていない区域
・今後の開発について未定な区域
自分の土地(農地)がどの区域に属するかは、市町村の都市計画の担当課(都市計画課など)で確認できる「都市計画図」を閲覧しましょう。自治体のウェブサイトで公開されている都市計画情報提供等のサービスでも調べられます。
市街化区域の農地

農地を駐車場に転用するためのステップ

ここでは、特にハードルが高い「市街化区域」以外の区域での許可申請を想定して、事前相談から工事完了までの流れを、以下の4つのステップで解説します。
1.事前相談
2.必要書類の準備
3.許可申請
4.工事着工と完了報告
順番に見ていきましょう。

1.事前相談

自己判断で書類作成を始める前に、まずは農地がある市町村の農業委員会事務局への事前相談を行うことがおすすめです。所有する農地がどの区分に当てはまるのかを調べ、事務局に相談することで、申請が通るか否かをある程度判断でき、余計な手間をかけずに済みます。
相談時に持参するとスムーズなものは、以下の通りです。
・土地の登記事項証明書(登記簿謄本)
・公図
・所在の分かる地図
・計画の概要
この相談の段階で「原則転用は不許可」の場合は、農地転用を諦めざるを得ません。「転用は難しい」といわれた場合は、計画を根本から見直す必要があります。逆に、前向きな感触が得られれば、次のステップに進むための具体的な指示をもらえるでしょう。
農地転用について担当者に相談する人

2.必要書類の準備

事前相談で得た情報にもとづき、申請に必要な書類を収集・作成しましょう。必要書類は多岐にわたるため、1つでも不備があると申請が受理されなかったり、審査が遅れたりする原因となります。抜けや漏れのないよう、準備を進めましょう。
申請において必要な代表的な書類を、一覧にまとめました。
カテゴリー 書類名 入手先
申請書 農地転用許可申請書 農業委員会
土地情報 土地の登記事項証明書 法務局
公図の写し 法務局
位置図 申請者本人
現況写真 申請者本人
事業計画 事業計画書(駐車場用) 申請者本人
土地利用計画図 申請者本人
建物の平面図・立面図(建物を建てる場合) 申請者本人
資金計画 資金計画書 申請者本人
必要書類は自治体や案件によって異なるため、必ず事前相談で確認しておきましょう。

3.許可申請

全ての書類がそろったら、農業委員会事務局の窓口に提出します。多くの自治体では、申請の受付締切日が設けられており、この締切日を1日でもすぎると審査が次回以降に回されてしまうため、スケジュール管理が非常に重要です。
提出から許可までは、農業委員会による調査を経て審査、総会での審議、さらに知事名義による審査・許可が行われるといった流れで、約1ヵ月~1.5ヵ月かかります。ただし、転用面積が4ヘクタールを超える農地の場合、転用には農林水産大臣の許可が必要となり、さらに6週間ほどの期間がかかるため注意しましょう。
一方、届け出で農地転用が可能な市街化区域内の生産緑地以外の農地は、提出から1週間~3週間程度で受理通知書が交付されるのが一般的です。なお、市街化区域内の農地でも生産緑地に指定されている場合は、届け出よりも先に生産緑地指定の解除が必要です。
農地転用の許可が得られたら、転用許可証(届け出の場合、転用受理通知書等)が発行されます。

4.工事着工と完了報告

無事に許可証が交付されたら、事業計画書に記載された通りの工事を行います。工事が完了したら農業委員会に対し、計画通りに事業が完了した旨を伝える報告書を提出します。自治体や許可条件によっては、工事の進捗状況についての報告書が求められることもあります。
工事完了後は、法務局で土地の登記簿の地目を「田」や「畑」などから、駐車場の実態に合わせて「宅地」または「雑種地」に変更する、地目変更登記を速やかに行うことが必要です。忘れずに行いましょう。

農地から駐車場に転用する際の費用と税金

農地を駐車場にする場合、農地転用の手続きと併せて重要なのが、駐車場経営を始めるにあたって必要となる初期費用や税金を正確に把握することです。
以下で、かかる費用の種類と目安について解説します。
農地から駐車場に転用する際の費用のイメージ

初期費用

農地を駐車場として使える状態にするためには、まず造成工事と設備の設置が必要です。これらの初期費用は、駐車場の仕様(砂利敷きかアスファルトか、月極かコインパーキングか)によって変わってきます。
1㎡あたりの造成費用については、砂利で整地する場合は1㎡あたり2,000円~7,000円ほど、アスファルトで整地する場合は5,000円~7,000円程度です。価格に幅があるのは、もとの農地の状態によってかかる整地の手間や方法が異なるほか、舗装材のグレードによっても価格が変わるためです。
また、設備費用に関しては、特にコインパーキング方式でまとまった費用が必要です。コインパーキングの経営を始める際に必要な設備としては、料金精算機(1台50万円~100万円程度)やロック板(1台10万円程度)、監視カメラ、フェンス、看板などがあります。設備によっては電気の配線工事が必要となり、専門業者に依頼する費用も見込まなければなりません。
そのため、コインパーキングの経営を始める場合は、オーナーが設備費を負担する必要のない「一括借り上げ方式」での運営を選択するケースも少なくありません。
三井のリパークでは、一括借り上げ方式での駐車場経営のサポートを行っています(※2)。お気軽にお問い合わせください。
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税金

駐車場経営で確認しておきたい税金は、固定資産税や都市計画税、所得税、消費税です。
農地の固定資産税は、その土地の農業生産力を基準に、宅地より低く評価されます。特に生産緑地指定を受けた農地以外の市街化区域内の農地は、宅地相当の課税が原則ですが、実際に農業が行われている間は軽減措置の特例が適用されています。ただし、特定市街化区域農地は、農業を営んでいる場合でも、農地ではなく宅地の負担軽減措置が適用されます。
しかし、駐車場(宅地・雑種地)への転用後は、農地ではなくなるため、その土地は近隣の宅地と同じ価値があると見なされます。これにより土地の評価額そのものが跳ね上がり、税額も増加します。
また、駐車場経営で得た収入は所得税の課税対象です。給与所得者であっても、駐車場経営による所得(収入から経費を引いた利益)が年間20万円を超える場合は、原則として確定申告が必要です。所得区分は、事業の実態に応じ、「不動産所得」「事業所得」「雑所得」のいずれかに分類されます。
消費税については、販売先などによっては軽減税率の8%が適用されていますが、駐車場の場合は、消費税率は全て10%です。

農地を駐車場にするメリット

農地を駐車場に転用するメリットは、主に以下の3つです。
・農地より維持管理が容易
・生産性が低い農地からの転用であれば収益が増える
・初期投資が比較的少ない
順番に解説します。
農地から転用した駐車場

農地より維持管理が容易

農地で農業を営む場合、作物を育てるにあたって日々の水やりや草刈り、害虫対策といった農作業が必要です。さらに、天候に左右されやすく、大きな災害が発生してしまうと収益が得られなくなる可能性もあります。
その点、駐車場経営であれば農業ほどの手間はかからないうえ、収益が天候に大きく左右されることもありません。特に経営を駐車場運営会社に委託すると、オーナーの負担はほとんどないといってよいでしょう。
また、駐車場は必要な設備が少なく建物を建てるケースも少ないため、災害時の被害も限定的で復旧も比較的容易です。

生産性が低い農地からの転用であれば収益が増える

立地が駐車場に適しているという条件は必要ですが、農地からの収益が低い(生産性が低い)場合は、駐車場へ転用することで収益が増える可能性が高まります。
また、市街化区域内に相続した未利用の農地がある、農業を続けることが難しくなったという場合も、収益につながる駐車場経営を検討してみてもよいでしょう。

初期投資が比較的少ない

農地転用の土地活用としてアパートやマンションを建設する場合、数千万円から億単位の初期投資が必要です。一方、駐車場経営であれば、そこまで大きな初期費用はかかりません。特に一括借り上げ方式のコインパーキング経営であれば、初期費用はかからないため、ほかの土地活用に比べて初期投資を大幅に抑えられます。

農地を駐車場にするデメリット

農地を駐車場にするデメリットは、立地によって収益が大きく左右される点です。駅や商業施設の近くではなくても、住宅地などある程度駐車場の需要が見込める場所でないと、収益を増やしていくことは難しいでしょう。
また、農地から宅地(雑種地)に転用されることで支払う固定資産税や都市計画税などの税金は増えてしまいます。税金の負担は永続的なコストであるため、立地的に収益が一定以上見込めないと、収入より支出のほうが増えてしまう可能性もあります。
一度耕作をやめた農地を農業に適した土地に戻すことは難しく、試しに農地を転用することもできません。そのため、事前に市場調査を行い、駐車場にした場合の収支の見込みを十分に把握することが大切です。
農地を駐車場に転用するかどうか悩む人

駐車場への転用を成功させるために信頼できるパートナーを見つけよう

これまで、農地から駐車場に転用する際の方法や費用、メリットやデメリットについて解説してきました。農地を駐車場として活用することは、立地次第では眠っている農地を資産へと変える大きなチャンスとなることもあります。
一方で、駐車場経営の成功は、事前の調査と現実的な事業計画のうえに成り立つものです。転用の手続きや駐車場の経営計画などの専門的なノウハウが必要になるため、専門家への相談は必須といえるでしょう。
三井のリパークであれば、提携税理士に税務相談が可能です(初回かつオンラインの場合に無料)。また、地盤調査や液状化判定といった「土地調査」のご紹介(費用はオーナーさま負担)など、駐車場への転用に必要なサービスも充実しています。駐車場の運営では、一括借り上げ方式を採用しているため、毎月安定した賃料収入が期待できます。ぜひお問い合わせください。
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よくある質問

ここでは、農地の転用についてのよくある質問について、紹介します。
農地転用に関するよくある質問

一時転用との違いは?

「恒久的に駐車場にするのではなく、数年間の工事期間だけ資材置き場として貸したい」「近隣のイベント開催時だけ臨時駐車場として貸したい」といったニーズもあるでしょう。このように期間限定で農地を転用する制度が「一時転用」です。一時転用は、恒久的な農地転用が認められない農地でも認められる可能性があり、その期間は原則として3年間です。
一時転用も、農業委員会の許可を得なければならない点は通常の転用と同様ですが、一時転用終了後に農地として原状回復されることが確実である場合に認められる点が大きく異なります。また、税金は農地のままの課税にとどまる点も、通常の転用と異なる点といえるでしょう。ただ、現況によっては、農地と変わる課税を行う場合もあるためあらかじめ市町村の担当者に確認しておくと安心です。

農地を無断で転用したらどうなる?

農地を無断で転用したことが発覚した場合、農地法違反となり、非常に厳しいペナルティが科せられます。都道府県知事や農業委員会から、工事中の場合は工事を中止し、土地をもとの農地の状態に戻すよう命令が出されます。原状回復にかかる多額の費用は、全て違反者の自己負担となります。
また、無断転用は、農地法第64条および第67条にもとづく刑事罰の対象であり、3年以下の懲役または300万円以下(法人の場合は1億円以下)の罰金が科される場合もあります(※3)。一時的な利益とは比較にならないほど大きな金銭的・法的リスクを伴う行為であると理解しておきましょう。
※1 出典:「都市計画法 e-Gov法令検索」、デジタル庁
https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC0000000100 (最終確認:2025年9月30日)
※2 立地等によってはお受けできない場合もございます。また、建物解体、アスファルト舗装、外構、固定資産税などの租税公課や町内会費はオーナーさまのご負担となります。
※3 出典:「農地法 e-Gov法令検索」、デジタル庁
https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC0000000229
(最終確認:2025年9月30日)
駐車場経営
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初期費用 設備費用 運用費用 0円
※立地等によってはお受けできない場合もございます。 ※建物解体、アスファルト舗装、外溝、固定資産税などの租税公課や町内会費はオーナーさま(土地所有者様)のご負担となります。
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