30坪で土地活用はできるか
30坪の土地というと、広さは100㎡ほどになります。「2021年度 フラット35利用者調査」によると、注文住宅の全国平均123.8㎡よりはやや狭いが、建売住宅の首都圏平均98.0㎡とほぼ同じ広さで、家を建てるには平均的な広さとなっています。
では、このくらいの広さの土地で土地活用をすることは可能なのかというと、30坪でも土地活用をすることは十分可能です。土地活用の方法には、面積や立地条件に応じてさまざまなものがありますが、たとえば駐車場経営やアパート経営などは、立地次第で30坪程度の土地でも可能です。
今回の記事では、30坪の土地を例に、土地活用の特徴や活用例、押さえるべきポイントについて解説します。
30坪の土地は狭い?
上記の通り、30坪の土地は決して狭くはありません。アパートやマンションなどの賃貸住宅を建てるのにも十分な広さですが、広さだけでその土地活用方法ができるとは限りません。なぜなら、土地にはさまざまな法律や条例による制限があり、制限によっては、30坪の土地でも活用するには狭いということになるかもしれないからです。
土地に対する制限のうち、代表的なものは以下の通りです。
・容積率の制限
・建ぺい率の制限
・高さの制限
・斜線制限
容積率の制限
建築物を建てる際は、都市計画法に基づき市町村が定めた用途地域ごとに容積率の制限があります。容積率とは、敷地面積に対する延床面積(建物の床面積の合計)の割合のことです。たとえば、容積率50%の土地の場合、100㎡の敷地面積であれば、延床面積50㎡までの範囲内で建物の建築が可能となります。
容積率は、その土地がどういった種類の地域(用途地域)に属するかによって異なります。用途地域には住居系、商業系、工業系があり、それぞれの地域にふさわしい建物を建てるのに適した容積率が定められ、逆にふさわしくない建物は建てにくくなります。
たとえば、住居系の用途地域で容積率が150%以上あれば、30坪の土地でもワンルームのアパートなら1フロアに一定以上の部屋数を確保できるため、アパート経営として収益を見込むことができます。一方、容積率が100%以下の場合、建築できる部屋数が限られるため、アパート経営では初期費用が高く採算が合わない恐れがあります。容積率が低い場合は、駐車場経営など、建物を建てない土地活用のほうが適しているといえるでしょう。
建ぺい率の制限
建築物を建てる際は、容積率と同じく用途地域ごとに建ぺい率という制限があります。建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合のことです。たとえば、建ぺい率が50%の場合、真上から見て敷地面積の半分までの広さの建物を建てることができます。
建ぺい率も容積率と同様、各市町村によって指定され、その土地がどの用途地域に属するかによって割合が異なります。建ぺい率が高いほど土地を効率よく利用することができ、大きな建物を建築できます。当然、土地に大きな建物を建てられるほうがアパートやマンション経営をしやすく、立地がよければ、収益も期待できます。一方、たとえば建ぺい率が50%以下の地域では、それほど大きな建物が建てられず、アパートを建てても採算が取れない可能性があります。
高さの制限
前述した容積率や建ぺい率に加えて、土地には建築物の高さに関する制限があります。たとえば、低層の住宅がメインの用途地域(第一種・第二種低層住居専用地域)の場合、軒の高さは10mまたは12mまでと定められており、おおよそ2階または3階までの建物しか建築できません。また、建築物の高さが制限されている高度地区に該当する場合も、建物の高さが制限されます。
容積率や建ぺい率の制限をクリアしても、高さ制限によっては、思うような建物が建てられないケースがあることを覚えておきましょう。
斜線制限
これまで紹介した制限以外に、斜線制限というものもあります。斜線制限とは、建築基準法により定められる建物の各部分の高さに関する制限のことで、道路や隣地に建つ建物の日当たりや風通しを確保し、良好な環境の維持を目的とするものです。斜線制限には、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限の3種類があり、制限の算出方法は、市区町村の規定や用途地域の種類によって異なります。
このように、建築物を建てるには、先述した制限をはじめ、地区計画や緑化規定、日陰規制などのさまざまな決まりを考慮する必要があります。また、そもそも用途地域には、建物の利用にも制限があるため、その点にも注意が必要です。
一方で、駐車場経営のように建物を必要としない土地活用をする場合、建物の制限による土地利用の制約を受けません。建物を必要としない土地活用は、所有する土地の面積や建物の建築制限に左右されない土地活用が可能となりますので、お気軽にご相談ください。
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30坪の土地を活用する方法
30坪の土地を活用する一般的な方法は、以下の6つです。
・駐車場
・借地
・トランクルーム
・コインランドリー
・一戸建て賃貸
・アパート
駐車場
駐車場経営は、低リスクで手軽に始められる土地活用の1つで、メリットは転用性の高さにあります。建物を建築しないため、初期費用が安く、設備の撤去も容易で、売却やほかの土地活用への転用など、柔軟な土地活用が可能です。
また、変形地や狭小地など、ほかの用途では活用しにくい土地でも活用できることもあります。※2さらに、一般的な青空駐車場の場合、建物を建てないため、先述した用途制限を受けない点も魅力といえます。
一方で、賃貸住宅経営をはじめとする土地活用と比べると、期待される収益性が低いことがデメリットです。駐車料金は利用単価が低い傾向にあるため、高い収益を得たい人には不向きかもしれません。
駐車場経営には、「自主管理方式」「管理委託方式」「一括借り上げ方式」という3つの経営方式があり、オーナーがどこまで経営に参加するかが異なります。一括借り上げ方式であれば、開設から運営を全て駐車場事業者に任せられるため、オーナーは経営にほとんど参加することなく毎月安定した賃料収入が得られます。特にコインパーキングの場合はさまざまある機器の設置費用や運営費用を負担しないで済むため、少ない初期費用で始められる点がメリットでしょう。詳しくは、以下のサイトで解説しているのでぜひご覧ください。
借地
借地とは、土地を使いたい第三者に対して土地を貸し出すことです。土地を貸すだけなので初期費用はかからないことが多く、安定した地代収入を期待できるのがメリットです。
ただし、収益は安定しているものの、一般的に収益性が低い点がデメリットといえます。また、土地を借りた人がその土地に一戸建てやアパートなどの建築物を建てた場合、借地借家法により、借りる側の権利が非常に強く保護されます。一般的な借地契約では、自身の好きなタイミングで借地契約を解除できなくなり、その後は自由な土地活用ができないことになります。
トランクルーム
トランクルーム経営とは、収納スペースを提供し、月々の利用料を収入とする土地活用方法です。コンテナをトランクルームとして活用する場合、一戸建てやアパートの建築に比べると初期費用が抑えられ、管理の手間もかからないといったメリットがあります。
一方で、コンテナであっても建築物と認定されるため、先述した容積率や建ぺい率などの制限がかかるほか、用途地域によっては設置できないデメリットもあります。
なお、トランクルーム経営には2種類あります。レンタル収納スペースとして空間を提供する場合と、特定の物品を保管する場合です。後者のトランクルーム経営は倉庫業に該当するため、倉庫業法を遵守した申請・運営を行う必要があり、個人で経営する場合は負担が重くなる恐れもあります。
また、トランクルーム経営でも、自主運営方式や管理委託方式、一括借り上げ方式といった経営方式があり、それぞれ収益性や運営の手間などが異なります。
コインランドリー
コインランドリー経営は、土地に建物を建て、洗濯機や乾燥機といった設備を導入し、利用者に設備を使ってもらうことで収入を得る活用方法です。人件費や管理費などのランニングコストを抑えながら、経営が成功すれば高い利回りで収益化できる点がメリットとして挙げられます。
初期費用は、アパート・マンション経営よりは安いですが、まとまった費用が必要です。また、建物を建てるため、土地にかかる制限の影響を受け、場所を問わず建てられるわけではありません。さらに、無人で運営するため、金品や洗濯物の盗難、設備の破壊など、犯罪に遭うリスクやトラブルへの対応が必要になる可能性もあるため慎重に検討しましょう。
一戸建て賃貸
一戸建て賃貸による土地活用とは、一戸建ての住宅を建てて入居者を募り、家賃収入を得る土地活用方法です。メリットとしては、狭くてアパートが建てられない土地でも、一戸建てであれば建てられる可能性が高いことです。入居者が入れば、安定した家賃収入が得られ、土地や建物の税金対策にもなります。
デメリットとしては、アパートやマンションほどではありませんが、建物を建築するための初期費用が相応にかかることです。また、アパートやマンションに比べて貸室が1室(1戸)しかないことから、収益性も低い傾向にあります。そのため、一戸建てを新築して貸した場合、投資に見合う収益が見込めない場合がほとんどです。また、金融機関から建築費の融資を受ける場合も、自身が住むための住居ではないため、金利が低い住宅ローンでの借り入れができません。
アパート
アパート経営による土地活用とは、アパートを建築し、家賃収入を得ることです。土地活用として人気のある方法で、賃貸需要の期待できる立地であれば、有効な土地活用となります。
メリットは、立地がよく入居者が入るアパートであれば、安定した賃料収入が得られることです。また、土地・建物の固定資産税や都市計画税が軽減される特例措置があり、適用されれば、所有している間の節税が見込めます。また、将来、相続の際に発生する相続税についても特例があり、相続税対策にもなります。
デメリットは、建物を建てるための初期費用が高いことです。また、土地の面積や制限の影響で思うようなアパートが建てられず、期待したほどの家賃収入を得られないこともあります。さらに、修繕や入居者の管理などに費用や手間がかかる点にも注意が必要です。
30坪の土地活用におけるポイント
30坪の土地は、土地にかかる制限によって、適した活用方法が変わってきます。先述したように、土地にかかる制限は地域によって異なるので、それを把握し、まずはそもそも建物が建てられるのか、建てられる場合はどのくらいの建物が建築できるか考えましょう。
また、建物の大きさや用途によって収益は変わってきます。期待する収益が得られるような建物が建たないならば、駐車場経営のような建物が不要な土地活用がおすすめです。さらに、将来別の土地活用を行う可能性がある、あるいは土地の売却や正式な土地活用方法が決まっていない場合、一時的に活用するなら転用しやすい土地活用方法を選ぶとよいでしょう。
土地活用は駐車場経営がおすすめ
これまで、30坪でできる土地活用について、土地にかかる制限や具体的な土地活用方法をご紹介してきました。
土地活用方法を考えるときは、所有する土地にかかる制限を踏まえ、どのような建物が建てられるのか、かかる費用と収支のバランスは取れるかを確認することが大切です。建物は建てられても、期待される収益が見込めないならば、初期費用を抑えられる土地活用方法を採用するほうが得策といえるでしょう。
また、本格的な土地活用や売却を行うまでの間、短期で活用したいという場合、転用しやすい駐車場経営はおすすめです。特に、周辺に商業施設や住宅が多い地域は、駐車場の需要が高い傾向にあるため、検討の余地があるでしょう。
駐車場経営は、用途制限や各種の建物の建築にかかる制限がある土地でも始めやすく、その後の転用も比較的簡単です。検討段階での相談や、「30坪の土地なら何台ほど車を停められて、どのくらいの収益を見込めるか」といった具体的なご相談はもちろん、情報収集としてご検討中の方のさまざまなご質問にもお答えしております。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
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※1 出典:「標準駐車場条例の改正について」、国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001085153.pdf
(最終確認:2024年3月22日)
※2 立地等によってはお受けできない場合もございます。また、建物解体、アスファルト舗装、外構、固定資産税などの租税公課や町内会費はオーナーさまのご負担となります。